フェンシングのルーツは、中世ヨーロッパの騎士たちの剣術にあり、1896年第1回アテネオリンピックから、毎回正式種目として実施されている伝統ある競技です。
2021年東京オリンピックでは、男子エペ団体の決勝で日本がロシアオリンピック委員会に45対36で勝ち、金メダルを獲得しました。フェンシングで日本が金メダルを獲得するのは初めてです。
ところで、一言にフェンシングといっても、エペ・フルーレ・サーブルといった3つの種目があるのは知っているでしょうか?
この記事では、フェンシングのエペ・フルーレ・サーブルそれぞれの違いについて詳しく解説します。
この記事を読めば、より一層フェンシングが面白く見れるようになるでしょう!
フェンシングのエペ・フルーレ・サーブルとは?
フェンシングのエペ・フルーレ・サーブルというのは武器の名前であり、これが種目名になっています。
使用する武器やルールが異なり、それぞれの競技に面白みや注目点があります。
ポイントを表にまとめてみましたので違いを確認してみましょう。
エペ | フルーレ | サーブル | |
攻撃範囲 | 全身 | 胴体のみ | 上半身のみ |
武器 | 重量 | 軽量 | 軽量・鍔が特徴 |
攻撃方法 | 突き | 突き | 突き・斬り |
ランプの点灯 | 剣先圧力750gの突き | 剣先圧力500gの突き | 剣が触れただけ |
優先権 | なし | あり | あり |
注目点 | シンプルな判定 | 攻守の入れ替わり | ダイナミックな動き |
次からは、それぞれの種目について詳しく解説していきます。
フェンシングのエペ
攻撃範囲
頭からつま先まで全身が攻撃範囲となる競技形式です。
エペは「決闘そのもの」から発展した競技のため、全身が攻撃範囲となりました。
本場欧州で人気が最も高く、世界で最も選手層が厚い種目です。
武器
長さ110cm以下・重さ770g以下・鍔から剣の先端まで90cm以下・直径13.5cm以下の鍔
攻撃方法
攻撃方法は「突き」のみです。
先に突いた方にポイントが入り、両選手による同時突きの場合は、両選手のポイントとなります。ランプを見ればどちらの選手がポイントを取ったか分かります。
ランプの点灯
剣先にあるセンサーにより圧力750g以上の突きに反応。
優先権
エペには優先権がなく先に突いた方にポイントが入ります。フルーレやサーブルでは、相手が剣を払ったり剣先を逸らせることで優先権が移る仕組みとなっています。
注目点
剣が見えなくてもランプが点灯すればポイントとなることが分かり、判定がシンプルでわかりやすく初心者でも観て楽しめます。
3種目の中でエペのみ「相打ち」が存在します。0.04秒以内の同時突きは「相打ち」として両者に得点。そのため張り詰めた緊迫感を楽しめる種目といえます。
相手の意表を突いたりと、フットワークで相手を乱す駆け引きを繰り広げるのがエペの魅力です。
フェンシングのフルーレ
攻撃範囲
背中を含む、胴体のみが攻撃範囲となる競技形式です。手足は除きます。
フルーレは「決闘の練習」から発展した競技で、練習時は危険を避けるため、防具のある胴体のみが攻撃範囲になりました。
日本で一番メジャーな種目です。
武器
長さ110cm以下・重さ500g以下・鍔から剣の先端まで90cm以下・直径12cm以下の鍔
攻撃方法
攻撃方法は「突き」のみです。
先に突いた方にポイントが入り、両選手による同時突きの場合は優先権を持っている選手のポイントになります。
ランプの点灯
剣先にあるセンサーにより圧力500g以上の突きに反応。
優先権
優先権が大事となる種目です。両選手のうち、先に体を前進させ剣先を相手に向けた方に優先権が生じます。
相手選手ががその剣を払ったり剣先を逸らせると優先権を奪い返すことができ、反撃に転じることができます。
注目点
攻撃-防御-攻撃-防御といった攻防が瞬時に行われ、技の動作の応酬がフルーレの魅力です。優先権がある競技のため、両選手の駆け引きが注目になります。
剣先を巧みにしならせて相手の予期しない軌道で背中を突く「振り込み」と呼ばれる大技は北京オリンピック銀メダリストの太田雄貴さんが得意としていました。
フェンシングのサーブル
攻撃範囲
腰から上の上半身全てが攻撃範囲となる競技形式です。
サーブルは「騎兵隊の剣技」から発展した競技で、騎兵隊として相手の馬を傷つけることを避けるために、上半身のみが攻撃範囲になりました。
武器
長さ105cm以下・重さ500g以下・鍔から剣の先端まで88cm以下・直径14cm未満、全長15cm未満の鍔
攻撃方法
攻撃方法は、フルーレやエペと異なり突き以外に「斬り」があります。
先に突いた、もしくは斬った方にポイントが入り、両選手が同時に突いた、または斬った場合は、優先権を持っている選手のポイントになります。
ランプの点灯
センサーが剣身全体にあり、剣が上半身に触れただけで反応。
優先権
ルールはフルーレと同じで、優先権に基づいています。先に攻撃を仕掛けた選手に優先権が与えられ、相手選手がその剣を払ったり剣先を逸らせると優先権を奪い返すことができることは、フルーレと変わりありません。
注目点
「突き」だけでなく「斬り」の技が加わることで、よりダイナミックな攻防を垣間見れるのがサーブルの魅力です。
剣身のどの部分でも攻撃ができるため、攻撃範囲に触れただけでポイントになりますが、フルーレと一緒で優先権があるので、両選手の駆け引きが注目になります。
フェンシングの中でも特にスピーディに勝敗が決する種目のため、激しい動きと豪快な切り合いがサーブルの面白さです。
まとめ
フェンシングは、野球やサッカーなどに比べると競技人口が少なく、そのルールや種目についてはあまり知られていないようです。
この記事では、初心者もわかりやすくフェンシングのエペ・フルーレ・サーブルそれぞれの違いについて解説しました。
フェンシングの魅力は頭脳を使った駆け引きにあります。選手同士の距離が詰まる瞬間や剣が交差してからの連続技など…
ルールが分かるとその競技の観戦が断然楽しくなりますね。初心者でもわかりやすく楽しめるスポーツですので、一度は試合会場に足を運んでみるのもいいかもしれません。