野球経験者やであれば知っているであろう「勝ち投手」という言葉。大まかなルールしか知らないほんとんどの人にとっては「勝ち投手」という言葉は試合に勝った投手?程度にしか意味が捉えられないかもしれません。
実は、勝ち投手の権利を獲得する条件は複雑で、先発投手と中継ぎ投手でも条件が異なるといったように、詳しく説明できる人は野球ファンでも意外と少ないものです。
この記事では勝ち投手の権利や条件、問題点などについて解説します。
勝ち投手とは
テレビで野球中継やスポーツニュースを観ていると「勝ち投手」という言葉をよく耳にしますが、これはつまりその試合の勝利投手のことを指し、チームの勝利に大きく貢献した投手のことです。
勝ち投手に選ばれるのは主に先発投手であることが多いため、先発に起用された投手はこの勝ち投手の権利を獲得することを目指しています。
投手は勝ち星を重ねることが評価として最も分かりやすい指標となり、その成績が自身の年俸にも大きく影響を与えるため、一つでも多くの勝ち星を得るために日々トレーニングや試合に臨んでいます。
シーズン中に2桁以上の勝利をあげる投手はチームにも数名しかいません。さらに、投球内容は悪くなくてもチームの援護に恵まれず、勝ち投手の権利を獲得できないこともあるのです。
では、勝ち投手の権利を獲得するためにはどのような条件があるのでしょうか。
勝ち投手の権利を獲得する条件とは?
野球は通常9回制であり5回終了時に試合は成立します。そのため、先発投手が勝ち投手の権利を得るには最低でも5回を投げきることが条件です。
しかし、9回ではなく6回未満(降雨コールドなど)で試合が終了した場合は4回を投げきれば勝ち投手の権利は得ることができます。
また、5回以降でチームが負けている場合、チームがリードした時点で登板していた投手が勝ち投手となり、一度でも同点になってしまうと勝ち投手の権利は消滅しまうのです。
たとえば、先発投手の好投により1-0で勝っていて5回を投げきり勝ち投手の権利を得た状態でマウンドを降り、次に投げた中継ぎ投手(救援投手)が点を取られた場合は先発投手の勝ち投手としての権利は消滅し、そのあとに勝ち越した時点で直前まで投げていた中継ぎ投手が勝ち投手の権利を得ます。
ただし、中継ぎ投手が二人以上いた場合は最も貢献しチームを勝利に導いた投手に勝ち投手の権利が与えられるので、投球内容(投球回数・失点・自責点・試合の流れや登板時の状況)も重要だといえるのです。
- 先発投手は5回を投げきることが勝ち投手なるために必要
- チームが勝ち越した直前にマウンドに立っていた投手が勝ち投手
- 中継ぎ投手が勝ち投手になるには投球内容も重要
これらが野球の勝ち投手の条件といえるでしょう。
勝利投手が不公平だと言われる問題
ここまで勝利投手の権利を得るための条件について解説しましたが、一口に「勝利投手」といっても、その内容にはさまざまなパターンが存在します。
- 9回を一人で投げきっての勝利投手
- 継投で1イニングだけ投げての勝利投手
- 打者に対しての投球が1球もない勝利投手
これ以外の条件でも勝利投手になるケースはあります。
しかし、どのパターンでも勝ち星の価値は変わりません。これには不公平だという意見も少なからず存在します。
先ほどの例にあるように、イニングの途中2アウトで登板し打者に対して投球をせずに牽制でアウトをとり、その次のチームの攻撃でチームが逆転しそのままの点数で試合が終了すれば「0球勝利投手」となります。これは、投手の球数はあくまで「打者に対して投げた場合」のみカウントされるためです。
このことからも分かるように、勝利投手になるための条件は采配やチームの得点力によって大きく左右される要素であるといえるでしょう。
そのため、どうしても公平性に欠ける場面が出てきてしまうのです。野球ファンからすれば「なんであの投手が活躍したのに勝利投手は違う人なんだ」といいたくなるようなケースもあるかもしれません。
しかし、あくまでデータをもとに勝利投手は決められるため、選手にとってもファンにとっても納得のいかない結果になってしまうことはあります。
勝ち投手の歴代記録
日本のプロ野球は1936年(昭和11年)からはじまり、その2年前にベーブ・ルースが来日したことでも有名です。これまでに数々のスター選手が誕生した日本の野球界ですが、投手の歴代記録にはどのようなものがあるのでしょうか。
歴代通算勝利数と歴代シーズン勝利数についてみていきましょう。
【歴代通算勝利数】
選手名 | 登板数 | 勝利数 |
---|---|---|
金田正一 | 944 | 400 |
米田哲也 | 949 | 350 |
小山正明 | 856 | 320 |
【歴代シーズン勝利数】
選手名 | 登板数 | 勝利数 |
スタルヒン(1939年) | 68 | 42 |
稲尾和久(1961年) | 78 | 42 |
野口二郎(1942年) | 66 | 40 |
2020年のシーズン最多勝記録は、セ・リーグは菅野智之選手(巨人:20勝)パ・リーグは涌井秀章選手(楽天)千賀滉大選手(ソフトバンク)石川柊太選手(ソフトバンク)の3選手が11勝でした。なお、菅野投手と涌井投手の登板数は20試合とこのなかでは最も多い数字です。
歴代の記録と比較して、シーズン勝利数や登板数には大きく差があることがわかるでしょう。
以前と異なるのは登板数が3分の1以下という点です。登板数が少なければ、当然勝利数も少なくなってしまいます。
現在は先発ローテーションを5人で回すなど起用法が変わったため、一人の投手がたくさんの試合に登板することがなくなったのも勝利数にこれほどの差が生じた理由といえるでしょう。
まとめ
「勝ち投手」になる条件は先発投手が5回を投げきる、決勝点が入った直前に登板していた中継ぎ投手、といったいくつかのケースがあります。
しかし、勝利投手の不公平問題がその裏にあることも事実であるため、観戦している人の印象と公式記録とでは勝利投手が異なることもあるでしょう。これはチームの采配や試合の展開によって左右されることでもあります。
また、歴代投手が打ち立てた記録と比較してもわかるように、一人の投手が投げ抜くのか投手リレーをうまく活用するのか、それらの戦術の違いで投手の成績も大きく異なるということがわかるでしょう。
今回の記事で勝ち投手になる権利や条件について理解を深めることで、今後の野球観戦において違う角度からの見方ができるようになります。細かな部分ではありますが、知っておくと野球観戦がまた一つ楽しくなるでしょう。